2010年9月 3日(金) 20:55 JST
「あんた、さっき子供が好きだって言ってただろう?」
「は?何なのあんたの言語解析能力狂ってない?言ってません!全く言ってない、強いて言うなら何で自分の子じゃない子供を面倒見てるんだってことくらいで、別にそれだって大して興味はないけど、言っちゃあ悪いけど・・・自分の子でもないのに育てるって、普通じゃないでしょ?自分の子供だって育てたくないけど苗字の違う他人の子供を育てるって、普通ワケありっていうか、そういう普通じゃないことなんでしてるのっていう、やじうま根性の一つや二つ沸くのが普通、だから何で苗字の違う、自分の子じゃない子供を引き取ってるんだとしたら、『なんでそんなことしてんの?』ってことに興味を持つのは当たり前なんじゃないのか?って言えば言うほどオレが罪悪感を憶えるのは何故?っていうか子供が好きだなんていってない!」
「・・・そうか」
「・・・」
「・・・」
「で?」
「何が?」
「っていうか何がじゃないだろう!あんたが先に質問してきたんじゃないの?だから何?なんのための質問なのよ?そうかで終わってんじゃん!っていうかなんでオレ一人でこんなに台詞が多いわけ?いや、別にいいんだけどさ~元々オレはそんなにお喋りなほうじゃないよ、どちらかといえば寡黙?クールっていうかさ、そういうなんていうか・・・まあ、キャラを演じて生きてきたっていうか。ただあんたのその会話のリズムは、間が空きすぎじゃない?突っ込みたくないんだけど、何も言わないでいるのも辛くなるから結局オレ一人でペラペラ喋ってアホみたいじゃん、あのさ、せめて会話のキャッチボールというか、オレが喋った分くらいは喋ってくれてもよくない?」
「それはともかく、オレが今日のメシ当番なんだ」
「ああ~そうですかっていうか話変えたよね、散々喋らせた挙句おいてけぼりかよ」
「買い物行ってる間に
が帰ってきたら、これを渡してくれないか」
「なんだこれ?タマゴか?」
「ゆでたまごだ」
「・・・おやつってことか?」
「そうだ」
「ゆでたまごがおやつ・・・う~ん、まあそれはそれでおいといて、渡すことは出来ないな」
「わかった」
「いや・・・・・なんで?とか、聞かないの?」
「・・・なんのために?」
「いや・・・だってさ、普通頼まれたら、断わらないだろ?でもそれを断わるってのは理由があるんだぞ、そういうことを聞かないってのは・・・言ってみれば、オレが理由もなく意地悪で断わっているみたいに取ってない?ちょっとそれって迷惑っていうか、かえって嫌味じゃない?っていうかオレは何喋ってんだ」
「じゃあ、逆に聞くが・・・」
「・・・なんだよ」
「それを聞けば、ゆでたまごを渡せるようになるのか」
「・・・・」
「あんたが引っ越してくる前は、オレはゆでたまごをどうしていたのか知っているのか」
「いやいやいや、知ってるわけないじゃん!っていうか何であんたのゆでたまごの秘密を知ってる必要があるのよ、あんたのゆでたまごはあんたの自由でしょ!おれに何の責任もないし、おれは別にゆでたまごなんか欲しくないし!それに、いいたかないけど、ゆでたまごっておやつか?いや・・・これは余計なお世話かもしれないが、子供が食うおやつって甘いものとか、お菓子っていうか、まあ・・・手作りクッキーあんたに焼けとは言わないけど、ゆでたまご1個渡せって言われても、その渡す行為がオカシイだろ?なんでなついてもいないおっさんがタマゴ一個持ってほ~らタマゴだ~なんて言わなきゃいけないんだよ、変態だろそれって」
「・・・・」
「いや、ちょっと言いすぎたらすまなかったけど、なんていうか、オレたちってゆでたまご渡せるほど親しくないっていうか・・・いや、別にゆでたまごにこだわる意味は全くないんだけど」
「わかった」
「いや、ちょっとまて、あんた絶対に判ってない!わかったふりして現実逃避するのはやめろよ、現実逃避・・・じゃないか、ま、よくわからんけど、あんた・・・おれがゆでたまご嫌いだと思ってるんだろう?」
「・・・嫌いなものを無理することはない、アレルギーの子供もいるし」
「いやいやいや、違うっての!っていうかやっぱりあんたオレがゆでたまご嫌いだってカン違いしてるけど、おれはゆでたまご嫌いじゃないし、ゆでたまごは食うよ!蕁麻疹も出ない!アレルギーもないよ!でもさ、子供の頃おやつに・・・食ったことは・・・ま、それはそれでおいといて、オレがあんたの子供にゆでたまご渡すっておかしいんじゃないの?って言っているんだよ」
「さすが作家だな」
「は?」
「ゆでたまご一つでこれだけ長く話を引っ張れるのは能力がある証かもしれんな」
「・・・いや、それほどでも」
部屋から出て行く
「くそ!会話になってねえじゃん!大体なんでオレが子供にゆでたまご渡す役回りを頼まれなくちゃいけないんだ!ゆでたまごだぞ、ゆでたまご。何だゆでたまごって。結局最初の質問の理由も判らないし、オレがゆでたまご渡すの断わった理由も誤解したまんまだぞ、最悪。やっぱりこんなアパートやだ!住人が狂人だ!話にならん!わけわからん」
しばらく考える
部屋を出て、廊下を見た。
の部屋の前に、ゆでたまごが1個おいてあった。
傍に行き、床に置かれたゆでたまごに近づいて見た。
たまごの殻に「くっていい」と書いてあった。
「・・・・見なかったことにしよう」
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